クラスメイト
クラスメイト
私は、とりあえずその場から動く事にした。
もう夜になろうとしているのか、辺りは薄暗かった。
少し歩いて行くと、何人か人の気配がしてきた。
すこし不安になっていた私は足早にその人の気配に近づいた。
だけど、そこでいた人達の恰好を見て、私は呆然と立ち尽くしていしまった。
…なんで?ここはどこなの??
あの格好…あれじゃまるで…教科書に出てくる平安時代の着物…
異界…まさか、異界って言うよりタイムスリップ!!!
嘘でしょ…
その時、私はそこにいた男たちに見つかった。
「おい…あそこにいるの…土御門のお屋敷に最近現れた龍神の神子様って娘に似てないか?」
「なに言ってるんだお前?顔が全然違うだろ…それに、神子は女、あそこにいるのは男だろう?」
…なんかむかつくんですけど…
確かにショートカットだし、ボーイッシュかも知れないけど…
「あの…」
むかついた私は思わずその男たちに声をかけた。
「…すみませんが…その龍神の神子ってなんなんですか?」
「お前さん知らないのか?この京を鬼から守ってくれる龍神の神子様だよ。」
「龍神の神子…」
っていまいち分からないんですけど…
「さっき、最近現れたって言ってましたよね?」
「あぁ、なんでも神子は異界から来たそうだ。」
異界…まさか…そんなはずない…
井戸…異界…行方不明…私はクラスメートが言っていた言葉を思い出していた。
「…その土御門ってどこですか?」
「あぁ、つれてってやるよ…」
「ありがとうございます!」
私は深深とお辞儀をし、男達のあとについて歩き出した。
男達がこそこそと話している…
あれ?なんか…もしかしてヤバイかな…
知らない男の人についていくなんて…
その時、男の一人と目があった。
「…あの…なにか?」
「いやな…あんたが男か女か調べようと思ってな…」
ってやっぱり!
私は手を伸ばしてくる男から逃げる様にあとずさった。
「っ!!!」
だけど足元を取られ、その場にしりもちをついてしまった。
私…バカだ…
「いたたた…っ!ちょ…ちょっと!!!」
男達は座っている私の周りを囲んだ…
ヤバイ…
かなりやばいんですけど…
私は男達から目を離さないように辺りを手探りで探った。
なにか武器になるもの…木の枝でも何でもいい…なにか…
あっ!あった!!長い木の枝…これなら…
私は木の枝を手にすると、立ちあがった。
「…近寄ったら痛い目みるから…」
そんな事を男達が聞くわけもなく、近寄ってきた男達は私の剣術(?)によってあたり一面に伸びてしまった。
剣道やっててよかったぁ…
「ば〜か…」
私はそのまま枝を持つと、とりあえず歩き出した。
…ってこっちに来てあってるのかな?
その時、また人の気配がしてきた。今度は隠れて相手の様子を伺う事にした。
「…本当にこのあたりなのかい神子?」
「そのはずですよ友雅さん…藤姫が今日ここに重要な人物が現れるって…」
「しかし、どうしてこんな山の中なんだろうね?おかげで着物が汚れてしまったよ…」
「友雅殿…神子殿とご一緒するのがなにかご不満なのですか?」
「そうは言っていないだろ鷹通。どうせ神子殿とご一緒するならもっと趣のあるところが良かったと言っているのだよ。」
「まぁまぁ二人とも…」
神子ってさっきの男達が言ってた土御門の?
さっきの事があってか、私はかなり警戒をしていた。
その時、その警戒が気配でばれたのか、さっき着物が汚れたと文句を言っていた男がこっちを向いてかすかに笑った。
え…?ばれた?!
「そんなところでこそこそしてないで出て来たらどうだ?」
「え?友雅さん??」
一緒にいる女の子が不思議そうに男とこっちを見比べた。
「…ばれてたんだ…」
「あーーー!!!」
出て行くと、女の子が叫んだ。
「な…なに?!」
「どうしたんだ神子?」
「どうされました神子殿?」
「その恰好!!ジーパン!!!」
「…え?」
ジーパンという言葉をこの世界ではじめて聞いた私はビックリして声が出なかった。
「なんでジーパンはいてるんですか!!って言うか、なんでこんな所に一人でいるんですか!!」
「落ちつくんだ神子…そういきなり問いかけても驚くだけだろう?」
さっき私の気配を感じた男が苦笑してそう言った。
「改めてお聞きます。あなたは神子殿と同じ世界からいらしたのですか?」
「え?」
今度はもう一人の男が話しかけた。
「…世界?世界って…」
私は混乱して何を話していいか分からなかった。
「とりあえず藤姫の元へ戻らぬか神子殿?そろそろ日も暮れようとしている…」
「あ、そうですね友雅さん!行きましょう…」
そう言うと、女の子は優しい笑顔を私に向けた。
しばらく歩いて行くと、大きな屋敷についた。
…やっぱりここって…知らない世界だ…
「遅かったなあかね…ん?誰だそれ?ってその恰好!!」
「お帰りあかねちゃん!えぇ!!なんでジーパンはいてるのその人!!」
「ただいま天真君、詩紋君。この人が藤姫の占いに出た人みたいなの…」
屋敷につくと、二人の男の子がこの女の子に声をかけてきた。
この二人もジーパン知ってるんだ…
え?ちょっと待ってよ…今、あかねに天真って…ま…まさか…
「も…もしかして、元宮あかねさんに森村天真君?!」
「な…なんで知ってんだよ俺達の事…」
「まさか…あなたもあの井戸から?」
「…はい。」
それから、私は藤姫って言う可愛いお姫様にこの世界にあう服を借り、あかねさんと藤姫にこの世界に来たいきさつを話した。
「転校して来て噂を聞いて…まさか、自分までこんな事になるなんて…」
「そうだよね…あ、そうだ、名前は??」
「あ、です…」
「ちゃんね。」
「あ…あの…」
私はうれしそうに笑うあかねちゃんを止めた。
「ん?なに?」
「…お願いがあるんです…私が女だって事…ふせておいてもらえませんか?」
「え?どうして??」
私は、さっき襲われかけた…
なんて言えるわけもなく、ただ頑なに女と言う事を隠そうとした。
「…なにがあったのかは分かりませんが、殿がおっしゃるなら、しかたありませんわ…ねぇ神子様?」
「…そうだね藤姫…あ、じゃあどうやって呼べばいい?」
「えっと……ってどうでしょう?」
「分かった!ね!」
「分かりました殿。」
二人は笑顔でそう言ってくれた。
それから、8人の男の人を紹介された。
源頼久さん…このお屋敷に仕える武士らしい。無口なのか、あまり話そうとはしなかった。
森村天真君…彼は同じクラスになった人。みるからに喧嘩っ早そう…(苦笑)
イノリ君…彼はこの京に住む刀加治屋さんのお弟子さんらしい…この子も喧嘩っ早そうだな…
流山詩紋君…この子はあかねちゃんと天真君の後輩らしく…めちゃくちゃかわいい♪
金の髪と青の目か…かっこいいなぁ…
橘友雅さん…藤姫が左近衛府の少将とか言ってた…武人らしいけど…
全然そうは見えない…女の人にはすぐ声をかけるってタイプかな?女だって事気づかれない様にしなきゃ…
藤原鷹通さん…この人は治部の少丞とか呼ばれてた。凄く頭よさそう…かなり真面目そうだな…
永泉さん…この時代の天皇の弟さんらしいけど、出家してお坊さんになってる。
なんか引っ込み思案っぽいな…
安倍泰明さん…陰陽師安倍清明様のお弟子さんだそうだ…顔に呪いって言って仮面の様に白い物がつけられている。
なんか…いい人っぽいけど…冷たそう…言葉が少ないからかな?
彼等はあかねちゃんを守るための八葉って人達らしく…
その中の二人がさっきジーパンを見て叫んだ同じ時代のクラスメートの森村天真君と中学生の流山詩紋君だった。
「今日はもう遅い。部屋に案内しよう…」
そう言って黙って歩き出した頼久さんに着いていくと、あかねちゃんとは少しはなれた所にある一つの部屋についた。
「隣は天真の部屋だ。なにかあったら天真に聞くといいだろう…」
「あ、ありがとうございます…」
そのまま頼久さんは去って行ってしまった。
なんか凄い事になっちゃった…これからどうなるんだろわたし…?
部屋に入った私は、いろいろあったためかかなりつかれていたらしく、すぐに眠りについてしまった。