帰還
帰還
私はセフル君と一緒に姫の屋敷に向かった。
セフル君は布で顔を隠していた。
「まぁ、様…」
「こんにちは…あの…姫に会いに…」
「どうぞこちらへ…お連れの方も、さぁどうぞ…」
私達は何の疑いもなく姫の元に案内された。
「まぁ、様…ようこそいらっしゃいました…」
「こんにちは姫…ごめんなさいいきなり遊びに来てしまって…」
「いいのですよ。私も、ちょうど様にお会いしたかったところでしたから…」
「え?」
「しばらくお顔が見えなかったでしょう?
何故でしょうね…私と顔がよく似ていらっしゃるからでしょうか?
とても貴方のことが気になってしまい…」
「実は、僕もなんですよ!」
「そうなのですか?それはうれしいですわ…ところで、様…そちらの方は?」
姫の注意がセフル君に向いた時、姫の侍女が誰かを通した。
「これはこれは…珍しい事もあるものですね…」
「友雅さん!!」
「ようこそ少将様…ちょうど様も今いらしたところなのですのよ?」
「ほぅ…しばらく顔が見えないと思っていたが…ここで再会するとはね…
殿には聞きたいことが山ほどある…是非今日は私の家に寄りなさい。」
有無を言わせないような、笑顔だけどどこか怒ったような顔で友雅さんが私に言った。
でも、よかった…これであそこに帰らなくてすむ…
「ところで殿?そちらは?」
「あ、僕の友達です!!」
「っ?!」
「姫に紹介したくて…」
「へぇ…君が…」
僕はとっさにセフル君を友達といった。
その言葉に、セフル君が一番驚いたみたいだったけど…
友雅さんが何かを言いかけたとき、私は何かを感じて庭を見た。
「…どうした?」
セフル君が子声で私に呟いた。
「…分からない…けど…何か…」
「花の精ではないのか?この美しい庭に惹かれて迷い込んだのであろう…」
そういうと、友雅さんはその嫌な気配のするほうを見た。
「花の精とやらを確認しないか?」
「え?」
友雅さんは、僕の腕を掴むと庭に下りた。
庭におり、嫌な雰囲気のする所に行くと、字の書かれた石のような物が置いてあった。
「呪詛か…」
「え?」
友雅さんは地面を向いたまま小声でささやいた。
「…君が鬼の子供と友達だったとは…」
「これにはわけが!」
「わけはこれからゆっくりと皆の前で聞かせてもらうよ…
今日はこのまま君をさらわせてもらうが…いいね?」
友雅さんと私は小声で話すと、友雅さんがその石を拾い上げた。
「姫…すまないが、私達はこれで失礼させてもらっていいかな?」
「え?」
「ちょっと用を思い出してしまってね…さぁ、もそこのお友達とやらもおいで…」
「ごめんなさい姫!!また今度ゆっくり来ます!!」
私は友雅さんに腕を捕まえられたまま、セフル君と3人で姫の屋敷を出た。
「さて…これは君がまいたものか鬼の子?」
「やはり僕の正体に気づいていたか…」
セフル君が布を取った。
「だが、そんなもの、僕がやったんじゃない…」
「それは本当かい?」
「あんなところを汚しても、何の得にもならないだろ…」
「そうか…他にもどうして君達が一緒にいたかと言う話をゆっくり聞きたいのだが…
今日は君から殿を救うことでひくとするよ…」
「ちっ…」
セフル君は悔しそうに消えた。
「さて…この5日間何をしていたか、神子殿の前で全てを話してもらうよ?」
そう言って私は友雅さんと一緒にあかねちゃんの待つ屋敷へと帰った。