逃亡

逃亡?

私はさっきの男の子に連れられて、一つの部屋の前に来た。

「お館様の命令がない限り、ここから動くな…」
「ちょっと待って!私まだあなたたちの仲間になるなんて…」
「お館様の命令だ…聞くのが当たり前だろ…それに、仲間ではない…
お館様の為に力を使う星の一族だ…」

話がいまいち見えない…

「早く中へ入れ。」
「ちょっと待って!中に入って何をしてれば…」
「そんなこと僕の知ったことか…」

そういうと、男の子は私を置いて去ろうとした。

「あ、あの!!」
「なんだ…」
「名前を…あなたはなんて…」
「セフル…」
「セフル君ね…よろしくね!」
「…お前馬鹿か?仲良くしてどうする?」

セフル君はそういうと闇に消えた。
…どうして?どうして仲良くしちゃいけないの?
私は薄暗い部屋に入り、とりあえず座った。
これからどうしよう…
あかねちゃん達にここにいるって事を知らせられる方法もないし…
かといって、逃げられる方法も…
あの仮面をつけた鬼は私を星の一族と言った…
ってことは、藤姫の子孫ってこと?


それから、食事はシリンってあの綺麗な、でも怖い鬼が運んでくれて、
私はその部屋で数日を過ごした。
昼も夜も分からないから、私は何日そこにいるのか分からなくなっていた。
ある日、イクティダールという優しそうな鬼が部屋を訪れた。

「…具合が悪いところはないか?」
「え?あ、はい…大丈夫です…」
「…すまない…」
「え?」
「無理やりつれてきたのだろ?」
「あの…」
「お館様に従ってくれ…」
「でも、私力なんて…」

そのとき、私の中の何かが騒ぎ出した。
何?姫が…彼女に何かよくないことが起こるような気が…

「どうかしたのか?」
「え?あ、いえ…」
「顔色が悪いようだが…」
「…何かとても嫌な予感がするんです…」
「何?」
姫…姫をご存知ですか?」
「お前によく似た、どうやらセフルがたまに人間の姿で顔を見に行くあの姫か?」
「え?そうなんですか!!」
「あ…ああ…」

イクティダールさんが困ったような顔をした。

「セフル君呼んでもらえませんか?」
「セフルを?何故?」
「お話があるんです…」

イクティダールさんはセフル君を呼びに部屋から出て行った。
私がとっさに思ったこと…
姫を好きであろうセフル君なら、姫が危ないといえば、
絶対様子を見に行くはず…
そこにどうにかして同行すれば、ここから出られる…
出られれば、後はどうにか…
そんなことを考えていると、セフル君が現れた。

「なんだ…」
姫…知ってますよね?」
「それが?」
「…なんか…嫌な予感がするんです…何か彼女によくないことが起こるような…
お願い…私を連れて行ってください!」
「そんなことできるか!!」
姫が危険な目にあってもいいんですか!!」
「そ…それは…」

セフル君が私から目をそらした。
よし…いけるかも!

「お願い…今ならまだ間に合うような気が…」
「本当に何かあるんだな?」
「多分…なんだかすごく嫌な予感がするの…」

それは本当。
早くしないと…

「…分かった…お前は姫を知っているのか?」
「ええ。」
「…ついて来い…」

私はやっと部屋を出られることになった。
姫…何事も起こってなければいいけど…