ドリー夢小説
嘘
どのくらい眠っただろうか?
はふと目を覚ました。
他の四人はジープで眠ったままだ。
しばらく耳を澄ましていると水の音が聞こえてきた。
(…川?)
は水の音がする方へ歩いて行った。
少し歩いて行くとそこに大きく緩やかな川が流れていた。
「すごい!」
は思わず声を上げた。
は靴と靴下を脱ぐと川の浅瀬に足をつけた。
「冷たっ…気持いい〜…」
はしばらく岩に座って足だけを水につけていた。
覗き込むと水が月明かりにきらきら光ってその中に自分の顔が見えた。
「沙羅…どうしてるかな…?」
は妹のようにさえ思っていた沙羅の事を思い出していた。
は月を見た。丸くはなかったが、綺麗な月が夜空に輝いていた。
「…月の精…か…」
は前に悟浄がの髪を下ろした姿を見てそう言った事を思い出した。
「…月の精が嘘ついてていいのかな?」
「嘘って何の事?」
「っ!うわぁっ!!!」
は耳元で声が聞こえた事に驚いて川の方に勢い良く立ちあがった。
すると、足場が悪くて水の中にしりもちをついてしまった。
「おい!大丈夫か?」
「げほっ…いきなり背後から声をかけるなよ!驚くだろ!悟浄!」
「悪りぃ悪りぃ…」
悟浄が苦笑しながらに近づいてきた。
「おま…それ…」
悟浄はの近くによると、何かに驚いて立たせようと手を出したまま固まった。
「悟浄?」
は自分がなにかおかしいのかと自分の体を見た。
すると、しりもちをついた時に頭から水をかぶったため、服がびしょ濡れになり、
今まで隠していた体のラインがはっきりと浮かび上がってしまっていたのだ。
「っ!!!見るな悟浄!!!」
「お…お前…まさか…」
「あっち向いてろよ!」
は川底にあった小さ目の石を悟浄に投げた。
悟浄はあまりにも衝撃的だったのか、いつもなら避けるであろうその石をまともに顔面に食らってしまった。
「あ…ごめん…」
「って〜…」
悟浄は顔を押さえたまま後ろを向いた。
は水から立ちあがると、川から出た。
すると、悟浄が自分の上着を視線をそらしたままさし出した。
「…そのままだと風邪ひくぞ…」
「あ…どうも…えっと…見た…よね?」
「…あ…ああ…」
「…ビックリした…よね?」
「まぁな…」
「…ごめんね…嘘ついてて…騙すつもりはなかったんだ…だけど…その…
なかなか言い出せなくて…」
「とりあえず、ジープにある所に戻るぞ…そのままだとマジ風邪ひく…」
「…うん。」
はおとなしく悟浄にしたがった。
ジープのある所に戻るまで、悟浄は薪になるような木を集めて歩いた。
「…ありがとう…悟浄…」
「いいって…」
ジープの所につくと、ジープの側で悟浄は火を起した。
それから二人はずっと黙っていた。
「…何してるんだお前等…」
「こんな時間に水遊びですか?」
焚き火のおとに目を覚ましたのか、三蔵と八戒まで起きだして来た。
「…わりっ…起した?」
「…ああ。」
「ごめん…三蔵…」
「何かあったんですか?」
三蔵と八戒はの体が悟浄の上着で隠れているからか、まだ女だと言う事に気がついてはいない様子だった。
「なんでもねぇよ…水遊びしてたらが水に…」
「いいよ悟浄…ありがとう…でも…この際だから言わなきゃ…三蔵…八戒…ごめんなさい…実は俺…
ううん…私…女なんだ…」
「…何の冗談だ?」
「冗談じゃないよ…」
髪を乾かすために下ろしていたはそのまま三蔵を見た。
「…本当なんですか?」
「…うん…ごめんね…皆を騙すつもりはなかったんだ…だけど…なかなか言い出せなくて…」
は三蔵から目をそらすと下を向いたまま話している。
そんなに悟浄が声をかけた。
「でも、なんで男になりすましてたんだ?」
「…あの森に入ってくる妖怪を倒すため…はじめ女のまま戦ってたんだけど、妖怪たちは私が女だと思って手を抜くのよ…
そんなに強い訳でもないのに…なんか…女だからって手を抜かれるのが凄くいやで…悔しくて…だから仮面をつけて男として戦うことにしたの…
案の定男だと思うと妖怪達本気でかかってきた…本気を出された所で弱いのには変わりなかったけどね…」
は炎を見ていた。
「…それで僕達とも男として戦って…そのまま旅に同行する事になったんですよね…確かに言い出す事はできませんね…」
「…本当にごめんね…」
三蔵は黙っていた。その沈黙には不安になってきた。
「…三蔵?怒ってる?」
「あたり前だ…」
「…ごめんなさい…」
「お前が騙すつもりはなかったとしても、結果的には騙してるじゃねぇか…」
「三蔵…しかたないじゃないですかそれは!」
「そうだぜ!俺達だってこんなにカワイコちゃんなのに疑わなかったのがいけないんだし?」
「…三蔵の言う通りだよ…結果的には皆を騙した…私…皆といる資格ないね…明日…消えるよ…」
は悲しそうな笑顔を浮かべた。
「バカかお前…」
「え?」
「…一緒にいる資格なんて誰も持っちゃいねぇよ…」
「三蔵?」
「そんなに悪いと思ってるんだったらな…ずっとついてきて償え大バカ…」
「三蔵?!…いいの?このまま一緒に行っていいの?!」
「何度も言わせるな!」
三蔵は赤くなっているようだった。
「照れてやんの…」
悟浄の言葉が図星だったのか、三蔵は悟浄に向かって発砲した。
「っぶね!!いきなり発砲するなよな!!!」
「そんなに騒がないで下さい。悟空が起きてしまいますよ?」
「そうだ!…じゃないんだろ?名前教えてくれよ♪」
「…。」
「ちゃん♪可愛い名前だな」
「悟浄…ほんとあんたって女なら誰でもいいの?」
「そんな事ねぇぜ?」
「今まで一緒にいたあのと同じ性格の女だよ?」
「今まで一緒にいたから絆が強くていいんじゃない?」
「おい…。」
「なに?」
「そんな臭いもん早く脱げ…臭いのが移るばかりかバカまでうつるぞ?」
「げ…マジで?!」
「何だよちゃんその反応…悟浄すっげぇショック…」
「まだ乾きませんか?」
の側に来ていた八戒が長い髪を触った。
「まだ乾いてませんね…それにしても綺麗な髪ですねぇ♪」
「…なんで触るよ八戒…セクハラしてんのはどっちだよ…」
「ドサクサにまぎれていちいち触るな…」
「あのさ…言ったでしょさっき?女だからって特別扱い嫌なんだってば…」
「特別扱いじゃないですよ?ねぇ悟浄?三蔵?」
「…知らん…少なくとも俺はしてない。」
「なんだよ…それって俺と八戒はしてるみたいな言い方じゃん?」
「いっしょにされたくないですね悟浄とだけは…」
「いい加減静かにしないとお子様起きちゃうって!」
「…はぁ…俺はもう寝る…乾かしてから寝ろよ。一人風邪をひくとすぐに広まるからな…
まぁ…両隣に座っているのが馬鹿だからもしかしたら広まらないかもしれないがな…」
「そうですね…隣に移る前に前に来られても困りますもんね…」
「ちょっとお前等なんだよちゃんの両隣バカって!猿はバカだけど、俺は違うぜ?!」
「…どこが?」
「…ひでぇ三蔵…」
三蔵はジープに戻っていった。
「八戒と悟浄は寝ないの?」
「あなたと悟浄を残して寝るのはちょっと気が引けるもので…」
「それはこっちのセリフだ…お前とちゃん二人っきりにさせてたまるかよ…」
「…だからさ…すっごくの時と扱い違う気がするんだけど…」
「気のせいですよ♪」
「そうそう気のせい気のせい…」
「そうかな…?あ、そうだ悟浄…上着ありがと…」
殆ど乾いたは悟浄に上着を返した。
「いいえぇ〜いつでも言ってよこんなんでよけりゃ貸すからさ…」
「…あまり服のまま水に入る事はなさそうだけどね…よっし乾いた!寝よ寝よ♪」
「ちゃん俺の隣で寝ない?」
「寝ない。絶対にやだ。」
「じゃあ運転席で寝ますか?木で僕が…」
「八戒…そう言うとこがいやだって言ってるの。私はさっき自分でこっちで寝るって言ったんだよ?
八戒それに賛成したよね?」
「…そうですね…すみません。」
「いいって…んじゃお休み!」
「いい夢見ろよちゃん…なんなら寝れるまで側にいてやろうか?」
「遠慮するよ…寝た後が怖いから。」
「残念…」
「おやすみなさいさん。」
「ねぇ…あのさ、最後に一つだけ…ちゃんとかさんやめない?」
「え?なんで?」
「癖なんですよね…」
「なんか…他人行儀で嫌なんだ…」
「わかったよ…」
「明日から気をつけますね。」
悟浄がの頭をクシャクシャっと撫でた。
「ありがとう…おやすみ…また明日ね!」
そうして三人はさっきまで寝ていた場所にそれぞれ戻っていった。
そして、次の朝。
「おはようございます。」
「おはよう八戒…」
「体痛くありませんか?」
「…ちょっと…」
は苦笑して八戒に答えた。
「…なぁ…悟浄…なんでの事って呼んでるんだ皆?」
「あ?あぁ…ガキは昨日いなかったもんな…はだったんだよ…」
「はぁ?なんだよそれ?」
「おはよう悟空。」
「なぁ。がってどう言う事?」
「え?あ…あのね…ごめんね悟空…私実は女なの…」
「…え?嘘?マジ?」
「マジ。」
「えぇ?!なんで黙ってたんだよ!!!」
「なんでって言われても…なかなか言い出せなくて…」
「それになんで皆知ってんだよ?!」
「それは…昨日の夜いろいろあって…」
「俺が寝てから?」
「…皆が一眠りしてから…」
「…起してくれれば良かったのに…なんか俺だけ仲間はずれみたいでなんかやだ…」
「悟空…ごめんね…」
「…ってかお前一度寝たら朝まで起しても起きないじゃん…」
「煩いな悟浄!それでも起して欲しかったんだよ!!」
「煩いぞお前等…朝からわめいてんな猿。」
「三蔵!!ひどいじゃん皆で!!」
「うるせぇ!!」
朝から早速三蔵のハリセンが悟空の頭に入った。
そして、軽く朝食を済ませ五人は出発した。
「なぁ…じゃないや…」
「ん?」
隣に座っている悟空が話しかけてきたため、は悟空の方を向いた。
「俺の事守るから…」
「…は?」
「…すげ〜強くても、やっぱ俺なんか心配なんだ…だから俺もっと強くなっての事守るから!」
「あの…気持はうれしいんだけど…守られるのはちょっと…」
「じゃあ俺が守るからは俺を守ってよ!それだったらいいだろ?」
悟空に満面の笑みで言われたは苦笑しつつ頷いた。
「…仕方ないな〜もう…」
「俺も守って欲しいなぁ〜」
「引っ付くな悟浄…」
「う゛…やるじゃん…」
「ど〜もっ♪」
肩を抱いてきた悟浄の腹に笑顔のままのの肘が入った。
「でも、それいい考えですね…僕も守ってもらおうかなに…」
「ちょ…ちょっと八戒?!」
「…僕達皆をお願いしますね。そのかわり、僕達皆であなたを守るので…」
八戒はバックミラーごしに笑顔を送った。しかし、どこか目は真剣な色を帯びていた。
「…あぁもうやだなぁ…また仕事増えちゃたじゃない…」
「仕事?何の事だ?」
「忘れたの三蔵?三蔵に押しつけられた鬼畜坊主と馬鹿猿とエロ河童と笑顔魔人の子守りだよ…」
「誰がエロ河童よちゃ〜ん」
「バカ猿って言うな?!」
「笑顔魔人…ですか…」
「…お前…それどこで覚えた?」
「旅始まったばっかに悟浄と八戒が言ってたじゃない?」
は笑っていた。
「…お前等か…」
「あれ?僕そんな事言いました?」
「覚えててくれたんだ〜悟浄か・ん・げ・き♪」
「いちいちくっつくな!…この場でたたっ切るよ…」
「遠慮しときます…ごめんなさい…」
こうして三蔵一行は花が添えられた事で益々賑やかに旅を続ける事になった。
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