奇襲
1 奇襲
「…ちっ…」
「どうした三蔵?腹減ったのか??」
「どうした三蔵?腹ぺこ小猿ちゃんの病気がうつったのか?」
「煩い!!」
旅の途中ジープを休ませるため、森の中で休憩をしていた三蔵一行だったが、三蔵が急にイライラし始めた。
「それにしても、今回のはしつこいですねぇ…いつまでついて回る気でしょう?」
「さぁな…」
「この森じゃ、相手の方が有利なんじゃねぇの?随分この森に詳しそうじゃない?」
悟浄がタバコに火をつけた。
その瞬間、今まで三蔵が感じていたイライラの原因である殺気が消えた。
「お?諦めたか?」
「さぁな…」
三蔵もまたタバコに火をつけた。
その時、森の奥から誰かが近づいてくる気配がした。
近づいてくる気配は明らかに四人に敵意を示している。
「…悟浄…どこかで恨みを買うような事しましたか?」
「なんで俺なのよ…」
「すっげー強そう!!」
「小猿ちゃんはいつも元気だねぇ…」
「猿猿いうなよ河童!!」
「だ〜れが河童だってぇ?」
「うるせえ!」
「まったく緊張感のない人たちですねぇ…」
四人とも言いたいことを言いつつ、近づいてくる気配に気を配っていた。
「…っ!消えた?!」
「何?!」
三蔵と八戒が感じたように、再びその気配が消えた。
「どう言う事だよ!!」
「…上か?!」
三蔵が上を見上げると、四人の頭上から顔を仮面で隠した一人の少年が剣を構え飛び降りてきた。
「!!」
少年は三蔵と悟浄のくわえていた煙草の火のついた部分だけを剣で切り取った。
「っぶねぇ!!」
「…何者だ…」
「…この森でそんな物吸うな…それじゃなくてもあんたらが入って来た事で汚れたんだ…これ以上この地を汚すな…」
「何言ってんだこのガキ?!」
「待って下さい悟浄…この森に入ってからずっとつけていたのはあなたですか?」
「…そうだ…この地は…お前達のような奴等が入ってはいけない地なんだよ!!」
「ちょっちょっと!!」
叫びながら少年は八戒に切りかかった。
「…自己紹介が遅れたな…俺は…妖怪ハンターだよ!!」
「なにぃ?!」
八戒に攻撃を避けられた少年は、近くにいた悟浄に切りかかった。
しかし、次の瞬間少年は悟空の蹴りによって離れた所に飛ばされた。
すぐに体制を整えた彼だったが、次の瞬間後頭部に冷たいものを感じた。
そう、三蔵が銃をつきつけたのだ。
「貴様…紅孩児の手下か?」
「言っただろ生臭坊主…俺は妖怪ハンターだって…誰がわざわざ妖怪の手下になるかよ…」
「そうか…死ねクソガキ…」
三蔵が銃を放とうとした瞬間、少年は三蔵の腕を掴み、投げ飛ばした。
「なっ!」
「おぉ…三蔵投げ飛ばした奴始めてみたかも俺…」
「すげぇ…すげぇ!!」
「喜ばないで下さいよ悟空…これからが大変ですよ…?三蔵最高に切れてるみたいですから…」
「このクソガキが!!」
飛ばされた三蔵に三人の目がむけられた一瞬の隙に、少年は悟浄の背後を取っていた。
「…結構無防備だね赤毛のお兄さん…」
「なっ!」
悟浄は切りつけてくる少年の剣をよけるので精一杯だった。
少年の剣は空を切ったが、悟浄の髪の毛が数本切れた様だ。
「悟浄!!」
「あっぶねぇ…俺の自慢の髪の毛が切れちまったじゃねぇかよ!!」
「あれ?悟浄って髪の毛自慢にしてたっけ?」
「そうですね…少なくとも自慢はしてませんね…」
「もう少し切ってもらった方がよかったんじゃねぇのか?うっとおしい…」
「うるさいそこ…!」
少年は少しはなれた所で四人を見ていた。
「もう攻撃はお仕舞いですか?」
「そっちが終わりでも終わらせてやんないからな…覚悟しとけよ!!」
悟浄はそう言うと、錫杖を降りまわした。
すると、いとも簡単に少年はその攻撃を避けて行った。
「このぉ…避けるな!!」
「おや?珍しい悟浄が切れてますね…」
悟浄がキレ、再び攻撃しようとした時だった。
もう一人森の奥から誰かが近づいてきた。
すると少年は四人から距離を置き、攻撃を止めた。