奇襲

!!ここにいるの?!」
「沙羅!!来るな!!」
少年の視線の先に、可愛らしい少女がかけてきた。

「おぉ♪」
「…やっぱり…」
「なんだよ八戒?」
「いえ…あなたが毎回予想通りの反応をしてくれるもので…」

そんな三蔵一行にお構いなしに少年と少女は話している。

「こんな所で何してんの?」
「それはこっちのセリフだ!!こんな所まで何しに来たんだよ!!」
「あなたが余計な事しないようにお父さんに止めて来いって言われたのよ!!」
「な…余計な事?!俺はこの森を妖怪から…」
「それが余計な事なの!!妖怪が全部悪いって決まってないでしょ!!」
「悪いよ!!妖怪は…俺の父さんと母さんを目の前で殺しやがったんだぞ…」
…」
「とにかく、邪魔をするな沙羅!!俺はこいつ等を…っておい!!」

少年が少女と話しをつけている間に、三蔵一行は再びくつろぎ始めていた。

「ん?お話し終わった?」
「なぁなぁ八戒…俺腹減ったぁ〜」
「もう少し我慢して下さい悟空。すぐ終わりますから。」
「お前等ぁ…殺す!!絶対にこの手で消してやる!!」
「そこは気があうじゃねぇか…」
「…お前も一緒にだ生臭坊主!!」
「なぁ…さっきからおもってたんだけど…こいつなんで三蔵の事坊主だって知ってんの?」
「さぁ?なんででしょうね??」
「…アホかあんたら!!んな線香臭ぇ格好するのは坊主の他にいないだろ!!
…ただのコスプレやろうには見えねぇし…」
「ぶっ…コスプレ野郎だと…ある意味当たってんじゃん?」
「おい…俺が殺してやろうか…?」
「遠慮しときます…」

三蔵一行のふざけた(?)雰囲気に痺れを切らしたのか、少年の剣を持つ手は怒りに小刻みに震えていた。

「ちょ…ちょっとまってよ…今この人達三蔵って…」
「あぁ…そうだよ沙羅…あの金髪の生臭坊主が三蔵法師らしい…」
「って、このばかっ!!」

少女の拳が少年の後頭部に入った。
衝撃で少年の手から剣が落ちた。

「何すんだよ沙羅!!」
「やっぱり余計な事してるじゃない!!仮にも三蔵法師よ!!まったく…」

少女は三蔵に近づくと、深深とお辞儀をした。

「なんだ…」
「…ご無礼をお許し下さい三蔵様…我々の村に寄って行っては下さいませんか?」
「…断…」
「食いもんあるのか?!」
「君みたいな可愛い子他にたくさんいるか?!」
「できれば宿も…あ、お酒もあれば最高ですね♪」
「貴様ら…今まで殺すって騒いでた奴の村に泊まれるか!!先に進むぞ!!」
「誰が逃がすかよ…」

少年はまだ剣をしまってはいなかった。
三蔵の首に剣を当てると、難の感情もこもっていない目で三蔵を見つめた。

「…!!止めて!!!」
「…てめぇ…って言うのか?」
「さっき言っただろ?…1回で覚えろ生臭坊主…」
「てめぇ…何の為に今まで妖怪を殺してきたんだ?」
「はぁ?そんなの決まってるだろ…俺のためだ。」

少年は三蔵から目をそらさずそうきっぱりと言い切った。

「…親殺されてるらしいな?」
「あぁ…昔な…」
「…敵討ちのつもりか?」
「違う…俺が何匹妖怪殺そうが親は帰ってこない…そんくらい分かってるよ…」
「じゃあなぜ妖怪殺す?妖怪が死ねば誰かが助かる…そんな事思ってやってるのか?
だったら、それは単なる自己満足だろクソガキ…」
「…自己満足だって事くらい分かってるよクソ坊主…」
「…自己満足だって分かってんだったら止めるんだなクソガキ…」
「なんだと?」
「てめぇのわがままに付き合ってこっちは死んでられねぇんだよ…」

三蔵は喉もとの剣を手で払った。

「…わがままだ…?だったら、てめぇらに汚されたこの森はどうする気だよ!!」
「何?」
「ちょっと待って下さい三蔵…あなたは先程から『この森が汚れた…』と言っていますが、一体どう言う…」
「…この森は…私達精霊が住む森なのです…」
「私達…ってまさか…」

悟浄がくわえていた煙草を下に落とした。

「森の痛みは私達の痛み…を許して下さい…は…その痛みから私達を守ってくれているのです!」

少年は悟浄が落とした煙草を拾うと、小さな声で呟いた。

「……泊まるんなら…早くしろ…じゃないとまた俺の気が変わるからな…」

少年はどこかに消えた。

「…気難しい奴だな…誰かさんそっくり…」
「なんか言ったか赤ゴキブリ?」
「てめ!てめぇまでゴキブリ言うな!!」
「まぁまぁ…すみません…村に案内していただけますか?」
「…ええ。」

笑顔でそう答えた少女を先頭に三蔵一行は精霊の村へと歩き出した。