宿
2 宿
三蔵一行は少女に連れられて村に入った。
その村は、決して広くはなかったが、緑が多いとても綺麗な所だった。
「綺麗ですね…」
「ありがとうございます…これも…のおかげなんです…」
少女は横にいる八戒と話している。
「君の…?」
「ええ…」
「なぁなぁ!飯食うとこってどこ!!」
「え?あ、じゃあ私の家へどうぞ…すぐそこですから…」
「マジで!!早く行こうぜ!!!」
悟空は少女を連れ走って行った。
「おい!!ったくあのバカざる…」
「ちゃんとつないどけよ飼い主さんよぉ…」
「誰が飼い主だ…誰が…」
そんな三人の正面に少女とも思えるほど美しい少年が立ちはだかった。
「…なんだ?」
「…約束しろ…」
「はぁ?」
「…この村では煙草を吸うな…」
「あ、君は君ですか…」
「そうだ…」
「なんだよ…さっき仮面つけてたから分からなかったけど、結構美人なんじゃん♪」
「…お前はそういう趣味もあったのか…」
「お?なに、ヤキモチ?」
三蔵が銃を構えると、が二人の間に立ちはだかった。
「それも止めろ…誰に当たるかわからないだろ!!」
「…ちっ…」
三蔵は舌打ちをすると銃をしまいこんだ。
「サンキュ♪」
悟浄が小柄なの肩を組むと、はそれをはずし歩き出した。
「…沙羅ん家に行くんだろ?ついて来いよ…」
「すみません…二人を見失ってしまいましたからね…」
三人は黙っての後について行った。
しばらくすると、すでに何かを食べている悟空の姿があった。
「なんだよ皆遅いじゃん!!」
「このバカざる!!」
三蔵はハリセンで悟空の頭を思いっきり殴った。
「いってぇな!!!」
「食いながらしゃべるなきたねぇだろ!!」
「まぁまぁ…すみませんいつもこんななんですよ…」
「おぉ上手そう!!」
「…あ、ごめんなさい!すぐ皆さんの分準備しますね!!」
「…俺も手伝うよ沙羅…」
「ありがとう。でも、は皆さんのお相手をしてて♪」
沙羅はをそこに残し奥へ入っていった。
「お、おい!!ったく…俺にこいつ等の相手だ…?」
「なぁ…」
「ん?」
は悟空に呼ばれ、悟空の方を向いた。
すると、悟空は必要以上にに顔を近づけていた。
「?!な…なんだよ?」
「やっぱり…お前綺麗な眼してるな!」
「…は?」
は思わず変な声を出した。
「なんだよ悟空…男をナンパか?」
「違うよ悟浄!!でもさ…本当に綺麗な目してるんだぜ!!
なんかさ、真っ黒だけどすげー綺麗!!」
悟空は満面の笑みをに向けた。
「…ははははっ!…はじめてだよ俺の目を綺麗だっていったの…」
ははじめて四人に笑顔を見せた。
その美しさに四人は一瞬見とれてしまった。
「…?俺の顔何かついてるのか?」
「…え?あ、いや…///」
悟浄が少し赤くなって煙草に火をつけた。
「吸うなっ!」
火のついたタバコを手で毟り取った。
「おい!お前…」
「大丈夫ですか手?」
「大丈夫…」
「んな分けないだろ!火がついてたんだぜ?」
「大丈夫だって言ってるだろ?!あいつの痛みに比べればこんなもん…
あっ!!坊主!!お前も火をつけるなよ…」
が三蔵がくわえた煙草を毟り取った。
「…ちっ…」
「それにしても、なんなんだよ!タバコくらい…」
「タバコくらいだ!!ふざけるな!」
と悟浄が喧嘩をはじめそうになった時、沙羅が大きなお盆一杯の食べ物を持って入って来た。
「沙羅!!大丈夫か?」
「あ、ありがとう…大丈夫…」
が思わず手伝いに立った。
「ところで、君と沙羅さんは特別な関係なんですか?」
『…は?』
二人がいきなり発せられた八戒の言葉に同時に声を出した。
「恋人なんじゃねぇの?すっげーいい雰囲気だぜ?」
とどめの悟浄の言葉に二人はお互いの顔を見ると、一緒に噴出した。
「……ぷっ…あはははは!!」
「やめて下さいよ!!もう!!」
二人が大笑いをはじめた。
「な…なんだ?」
「私がと特別な関係になれるわけないじゃないですか!!」
「そうだよ…人間と精霊が上手く行くわけないだろ?」
「…まぁ…な…」
「でも、あなたなら大丈夫そうですけどね君…」
「…他にもいろいろとあるんだよ…確かに俺は沙羅が好きだし、大切だよ?
…けど、あんた等が考えてるような仲じゃないんだよ…」
そんな話しをしてから、沙羅の父であり村長でもある精霊に三蔵一行は挨拶をし、一晩だけ泊まる事になった。